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2月4日(日)   花岡市民センター (三重県松阪市)

 地元松阪で、毎年一回の割合で続いています、「松阪子どもNPO」主催によるおやこ寄席も、今年で13回目を迎えました。
 前身が「松阪おやこ劇場」であるこの団体のスタッフのお一人が、私の小・中学校時代の1年先輩にあたる女性で、当時では女子学生がクラスに一人という風景も珍しくなかった工業高校に進学されて以来お会いしていなかったのですが、15年ほど前、突然我が家を尋ねてこられ、おやこ劇場の活動のひとつとして、小学生以上におやこ寄席、中学生以上に文我の会を催したいと切り出されたのです。
 各種子ども向けの活動を、声高に叫ばずとも地道に続けておられる彼女の言葉には、なるほどとうなずける点も多く、「それでは」と、お引き受けすることになりました。それから13年、CD用の録音場所にも安心して組み込める会となり、今年は私の末娘が属していますバレー部のお友達15人も加わって、一層賑やかな雰囲気の中、おやこ寄席初登場の雀五郎さんと、いつものように落語の解説から幕開け致しました。
 落語は、文我「しの字丁稚」「権兵衛狸」「皿屋敷」の三席。
 雀五郎さんは、私の兄弟子、桂雀三郎さんの二番目のお弟子さんで、大阪ではいろいろな落語会に、頻繁に顔を出している勉強熱心な御仁です。普段は、とてもとても無口なのですが、高座にあがると驚くほど大きな声でしゃべり出し、元気いっぱいの舞台を努めてくれます。
 今回、雀五郎さんには、解説にだけ登場して頂きましたが、またどこかで落語も聞いて頂けることと思いますので、楽しみにしておいてください。
 私も早いもので、落語家になって27年の歳月が過ぎ、沢山の後輩が出来ました。私にはない、いろいろな才能を持った個性的な人たちも多く、先輩後輩の枠を超えて、お互いが刺激し合える仲間でありたいと思っています。

 今年は、立春の暦が文字通りの暖かい2月となりました。寒がりの私には、嬉しくもありますが、やはり少し考えなければならない時期に来ているようです。沖縄のように、寒い冬を経験していない子どもたちが、本州でも増えてきたら、落語だけでなく、芸術芸能あらゆる分野で、冬の場面は想像して頂きにくくなってしまいます。


1月14日(日)   大須演芸場 (愛知県名古屋市)

 昨日の京都に引き続き、本日やって参りましたのは、おやこ寄席では、2回目の開催地となりました、名古屋大須演芸場。足立秀夫氏という、名物席亭の管理の許に、風情ある佇まいを見せている、今では、名古屋で唯一残っている寄席小屋です。
 松の内の本日は、まだ立派な門松が、入り口に据え置かれ、お正月の雰囲気をとどめています。そこに集まって来て頂いた、おやこ連れの皆様。
 「数え唄」の出囃子で、幕を開け、まずはいつものように、「落語って、どんなものか説明出来る人」と質問しますと、「ハイッ!」と、元気よく手を挙げてくれた男の子。「落語は、江戸時代から始まった伝統芸能で、おもしろくて、オチのある笑える噺」という、完璧な答えが返ってきました。’通’の子どもたちが、各地に増えてきています。
 本日の演目は、桂米平「手水廻し」 桂文我「権兵衛狸」「愛宕山」。
 この、「愛宕山」というのは、春先の京都で、商家のだんなさんが、舞子やたいこもちを連れて、愛宕山という山に登る時の様子や、その時に起きるハプニングを描いている噺なのですが、荷物を担ぎながら山を登っていくシーン、かわらけを崖っぷちから投げるシーン、小判を拾いに谷底から帰ってくるシーン、それぞれに見せ場があり、お囃子も入って、その場その場の風景が華やかに繰り広げられます。
 大人の会で普通に演じると、本当に体力のいるネタで、「東京落語の名人」と、亡くなられた今も語り継がれている、八代目桂文楽という師匠は、この噺を十八番にしておられたのですが、晩年はドクターストップがかかったという、本当に息の切れてしまいそうになるネタなのです。
 そう言えば、他の噺家が、以前アメリカの学校で、このネタを英語で披露した時、最後の、竹をしならせて崖の上にピョーンと戻ってくるクライマックスの場面で、「アメリカの竹はしならないので、実感が湧きません」というアンケートが寄せられたと聞きました。こんな所にも、お国柄の違いがあるのですね。
 また、「時うどん」を食べる仕草を、扇子で説明した時は、日本にいたことがあるという現地の方から、「こちらでは、日本のように、麺類が汁の中に入っているということが無く、スパゲッティーのような物ばかりで、まして、音を立てて食べるのは下品とされているので、おもしろさが伝わらないと思います」と、指摘されたこともあったようです。
 大阪落語と東京落語でも、言葉の使い方や演じ方に違いがあるのですから、国が違うとなれば理解しにくい箇所が出てくるのは当然でしょうが、誰しもが「おもしろい」とか「心地よい」とか感じる部分は、確実にあるわけですから、そこに焦点を当てて、笑い合えれば良いと思います。

 名古屋は、愛知万博が終わった後も活気が続いているようで、この演芸場がある大須商店街も老若男女の皆様で、いつもにぎわっています。
 私も、近頃東京にも進出しました、リサイクルショップ「コメ兵」のファンで、時間があれば楽器コーナーや着物コーナーを覗きに行っています。今日も、羽織のひもを見つけました。皆様も、お近くにお越しの節は、一度お立ち寄り頂ければ、おもしろい物が見つかるかもしれませんよ。


1月13日(土)   京都市アバンティホール (京都府京都市)

 本日のおやこ寄席は、何故か今まで開催していませんでした京都にて催されました。
 幕を開ければ、大阪の会場から、そのまま移動してきたような、リピーターの子どもたち。もちろん、初めて来てくれた子どもたちもいたのですが、’通’の子どもたちのために、今日の解説コーナーでは、少し違う質問をしてみました。
 「落語はどこで始まったのでしょう?」
 「落語はいつから始まったのでしょう?」の質問には、「江戸時代!」と答えてくれる子が、結構増えてきましたが、発祥の地を尋ねたのは初めてです。「東京」「京都」「大阪」「名古屋」「沖縄」ついには「アフリカ」という、思いがけない答えも飛び出しました。
 落語の話の種自体は、中国の『笑府』という本や、ヨーロッパのジョーク集から、取られている物もありますから、もしかするとアフリカにも、落語のような話はあるかもしれませんが、落語を皆さんの前で話すことを仕事にする、私達落語家の元祖で、記録に残っているのは、ご当地京都で1670年代に活躍しました「露の五郎兵衛」というお坊さんです。そこから、大阪、東京へと広がりを見せ、340年間脈々と続き、現在に至っているというわけです。
 五郎兵衛が書いた本には、300種の噺が収められていますが、おやこ寄席でもおなじみの、「胴切り」や「四人癖」「池田の猪買い」「道具屋」などの原話を見つけることが出来ます。
 五郎兵衛の時代は、現在のような部屋の中ではなく、野天で演じていたようですが、アンデルセンやグリムよりも古くから語り継がれてきている噺を、今また次の世代に伝えていけるというのは、とても嬉しいことです。
 本日演じましたのは、桂まん我「寿限無」 桂米平「犬の目」 桂文我「しの字丁稚」「権兵衛狸」。
 大阪からの子どもさんも多かったので、米平さんの登場には、今日も大きな歓声が上がりました。今年も、米平さんには、病気にならない程度に、お相撲さんに間違われた体型を維持して頂きたいと願っています。

 神社仏閣の建ち並ぶ京都は、四季折々の風情が、より深く感じられる土地です。夏の暑さ、冬の寒さもなかなか超一級ですが、今年は暖冬のおかげで、過ごしやすい一日となりました。
 それにしても、今日は、埼玉、高松、大分と各地からお出かけ頂いていた様子。皆様、本当にありがとうございました。


1月6日(土)   横浜にぎわい座 (神奈川県横浜市)

 お正月4日間は、日本晴れのお天気続きでしたが、一転5日の夜からは低気圧が日本中を覆い、日本海側は雪、太平洋側も雪や雨にたたられました。
 昨年に引き続き、2回目となりましたにぎわい座でのおやこ寄席。朝からの雨にもかかわらず、私達が会場に着いた頃には、既に何組かの子どもさん連れの方々の姿が見え、ありがたいことでした。
 前回の会の後、会館の方にもお願いしておりましたので、今回は開演中の飲食もなく、静かに幕が上がりました。
 助演は前回と同じく、体重102kgの米平さん。
 初めて参加の子どもさんが多かったので、最初の「らくごについて」にタップリ時間をかけました。1人で5人の役を演じ分けるコーナーでは、最後に、「人間以外に動物も演じられます」と、犬や猫の様子を演じてもらいます。いつもは「犬のミケ」とか「猫のポチ」とか言って遊ぶのですが、今日は「犬のマーチ」が初登場。実は、米平さんが家で飼っているチワワが「マーチ」という名前で、とても大事にされているのです。いきなり、「マーチ」と言われて、少々驚いた米平さんでしたが、そこは阿吽の呼吸で演じて頂きました。
 初め少しおとなしかった子どもたちが、大笑いするようになった頃合いを見計らって、落語は、米平「動物園」 文我「しの字丁稚」「うんまわし」の3席。
 「うんまわし」はCDにも収録済みですが、初めて聞くと、「先年、神泉苑の門前」のくだりは、大人でもなかなか覚えられません。しかし、子どもというのはリズムで覚えてしまうのか、私の娘も1年生の頃、5回ほど繰り返し聞くと、すっかり覚えてしまいました。(最後の、「『瓢箪、看板、灸点』と」の「と」まで言っていたのはご愛敬でしたが・・・)
 「帰ったらたこ焼きを食べたいと言われました」という嬉しいメールを頂きましたが、大人の会でも、お酒飲みの噺をすると「帰りにお酒が飲みたくなりました」とか、うどんの噺では「うどんを食べて帰ります」というアンケートを時々頂きます。この噺は、元来の「田楽」から、子どもたちに想像してもらいやすいように「たこ焼き」に変えたのですが、そう言ってもらえたら大成功です。
 帰りは雨は止んでましたが、風が強く、気温が随分下がっていましたので、道路の路面が凍結しないことを願って、三重県まで安全速度で戻りました。

 冬休みも終わっていこうとしています。新学期、お友達とまた会えるのは楽しみですよね。
 私の小学校からの友人は、今横浜に住んでいて、東京や横浜の落語会に足を運んでは、お互いの健康を気遣い、公演の感想を伝えてくれます。
 数は多くなくても、気持ちの許せる友達に恵まれた私は幸せです。
 今年は、学校でのイヤな事件が起こらないようにと願うばかりです。


1月2日(火)・3日(水)  まほろばホール (福岡県太宰府市)

 皆さん、明けましておめでとうございます。今年も、桂文我のおやこ寄席、宜しくお願いいたします。 皆さんは、楽しいお正月を迎えられましたでしょうか。
 私の年越しは、ここ15年ほど毎年、三重県伊勢市で過ごしています。
 伊勢神宮内宮前のおかげ横丁にある「すし久」というお店で、毎月末「みそか寄席」という落語会を、二部構成で催させて頂き、12月は「大みそか寄席」と銘打ち、6時と8時30分に開演しています。 開演前には、伊勢神宮にお詣りに行き、古いお札を納め、新しいお札を頂いてきます。往復に小一時間程かかりますが、数時間後に訪れる人混みからは想像出来ない静寂の中、玉砂利を踏みしめて歩くのは、年納めの区切りの行事として、とても神聖な気持ちになります。
 そして、寄席を終えると、おかげ横丁内のお店で、仲間と食事をしながら新年を迎えます。
 今までは、これで家に帰り、年賀状を楽しみに元旦の朝を待つのですが、今年は、太宰府の天満宮敷地横にある「まほろばホール」に向けて、午前中に改めて家を出発しました。近鉄電車、新幹線、西日本鉄道を乗り継ぎ、お昼過ぎには現地に到着。文明の利器はすごいですね。
 太宰府天満宮は、ご存じ学業の神様・菅原道真を祀った神社です。伊勢神宮に続き、天満宮でもお札とお守りを頂き、1日は「文我独演会」。今年の仕事始めとなりました。 おやこ寄席は、2日、3日の2公演。「四人癖」「しの字丁稚」「皿屋敷」「平林」「権兵衛狸」「犬の目」を努めさせて頂きました。
 大人の会も含めて、3日間で5公演をさせて頂きましたが、3日間とも良いお天気で、気持ちの良いお正月を過ごさせて頂きました。


 さあ今年はどんな年になるでしょうか。天満宮で引いたおみくじは「吉」でした。舞台から沢山のお客さんの笑顔を見せてもらい、去年以上にパワーアップ出来るようがんばります。
 皆さんに取りましても、嬉しい年でありますように。
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